__『今日』の定義は何か。
そんな問いを、わたしは日々繰り返している。ある人は今現在だと答え、ある人は昨日の次の日だと答えた。そしてまたある人が、日が昇ってから沈むまで、と答えた。
……日が昇って、沈むまで。
おそらく当たり前であるはずのその光景を、「わたし」は見たことがない。
この世界に太陽の光が届くことはない。それは今も、そしておそらくこれからも。
ずっとずっと、空を見上げてきた。
今も昔も、きっとそれは変わらない。
わたしが見上げる空が、他の人の知る空色を描くことはない。
ずっと、紺と紫が入り混じるだけ。星の輝きも見えない。
こんなつまらない世界で、わたしのこころをつかんで離さないものがある。
それが、月だった。
自分が光っているわけではない。それでも、淡く美しい光で夜を照らす希望。わたしにはない、それでもあこがれてやまない光。
それが、空に輝く瞬間を、わたしはひどく恋焦がれていた。
__そして、『今日』。
幾度目かもわからない今日を迎えた頃、わたしは空に輝く満月を見た。心が弾み、日課の散歩に出かける足取りも軽い。今日はきっと、いい日になるだろう。
さあ、「物語」を進めよう。
終わらない夜が、新たな今日が、わたしを待っている。
今日は、まだまだ終わらない。終わらせたくない。
……このユメを、ニセモノになどさせやしない。
theme001『今日』
−end−